関西品質工学研究会
関西品質工学研究会は電機、機械、自動車、素材、製薬、中小企業、経営・技術コンサルタント、大学など、関西に本社や主要拠点を置く多様な企業・団体の技術者ら約50人で構成する。品質工学会公認の地方研究会では、最大規模を誇る。毎月開催する研究会のほか、一般公開シンポジウムや他地域の品質工学研究会との合同研究会なども催し、活発に活動している。業種や組織の垣根を越え品質工学を学び、相互の情報発信による自由闊達な議論や品質工学の新たな考え方・技法の提言、会員間の親密なコミュニケーションが特徴だ。互いに技術開発の実例を持ち寄り、レベル向上を図り、会員が自主的に力を合わせ能力向上と次世代育成へ取り組んでいる。品質工学会や日本科学技術連盟(日科技連)、日本規格協会など国内の品質管理をリードする外部機関とも人材開発のネットワークを築き、会員を手厚く支援する。【2025年08月26日付】
©copyright 関西品質工学研究会では企業や肩書に関係なく、ベテランから若手まで自由に議論を戦わせる。さまざまな意見をぶつけあい、妥協せずに正しい理解や新しい考えを求めようとする。時には激しく討論するが、日本や関西のモノづくりを革新しようとする気風に富む。設立は1994年。品質工学フォーラム(現品質工学会)が発足した翌年にあたる。85年のプラザ合意以降、急激な円高が進み、輸出産業を中心にモノづくりに危機感が広がった。国際競争に打ち勝とうと、関東や中部のように品質工学を学べる拠点を関西にも立ち上げる機運が技術者の間で強まっていた。創設メンバーは、関西品質工学研究会の初代会長で元松下電工(現パナソニック)技師長の故・原和彦氏ら14人。当初は品質工学の創設者で、米国自動車殿堂入りを果たした故・田口玄一氏を講師に招いた。田口氏から直接学び、徹底的に議論する研究会の原型を築いた。以降、芝野広志氏(TM実践塾代表)、太田勝之氏(元シマノ)、鐡見太郎氏(三菱電機)が会長を務め、研究会の充実と会員増をリードしてきた。研究会でキャリアを積み、全国で活躍する品質工学コンサルタントも輩出している。 自由でとらわれない気風が、大きな研究成果を生んできた。関西品質工学研究会が2010年に提唱したのが「エネルギー比型SN比」。それに先立つ08年には、同研究会の会員と法人会員が共同で発表した後のエネルギー比型SN比の考察につながる「新SN比の研究」が、品質工学会の品質工学研究発表大会実行委員長賞を受賞している。SN比は品質工学の概念の核心を成す指標で、製品や技術の機能(働き)を数値で示し評価する。しかし、SN比の計算は複雑で対象ごとに求め方も異なり、品質工学の導入と普及の高いハードルとなっている。エネルギー比型SN比は思考と計算を簡素化し、幅広く容易に適用できる。使えない対象もあるが垣根を下げ、品質工学にチャレンジする技術者を増やせた。SN比の研究では各地にある品質工学研究会の中でもトップクラスを行く。 ©copyright 93年のバブル経済崩壊、08年のリーマン・ショックと、日本経済は長い低迷に陥った。関西のモノづくりも電機産業が大幅に縮小するなど、地盤沈下が続いた。品質のトラブルや不祥事も相次ぎ、技術者に逆風が吹く。品質工学は品質が社会に及ぼす損失を減らし、技術者の創造性を伸ばすのが理念だ。現実には多くの企業が品質に苦しみ、検査、手直しに膨大な費用と人手を費やしている。品質工学が日本発の優れた技術評価の手法ながら生かせていない現実に、品質工学関係者の危機感は強い。節目となった18年の関西品質工学研究会25年周年の式典では「アクションプラン」を公表した。会員の技量向上、設計の仕様決定から完了までのリードタイム短縮、柔軟な具体論の提案、品質工学の定義と用語の整理、他地域の品質工学研究会など外部との連携などを新たに打ち出した。モノづくりを変え、技術者も自ら変わる姿勢を打ち出す。 関西品質工学研究会の定例研究会は毎月初旬、土曜や金曜に日刊工業新聞社西日本支社(大阪市中央区)の大セミナー室で開かれる。主に現役の技術者が製品開発の相談事や悩み事を発表し、シニアやベテランの技術者が優れた知見や経験から実践的にアドバイスする。関西には素材から組み立てまで多様な製造業が集積するため、会員の技術はすそ野が広い。企業で開発と品質向上をリードしてきた異業種の技術者が品質工学を共通項に互いに学び、自社では発想できない視点から技術開発のアイデアを得られる。品質工学は技術の善し悪しをスピーディーに評価する手法で、さまざまな開発や製造、品質向上に生かせて汎用性が高い。どのような製造業やサービス業、研究にも会員の門戸が開かれているのも、専門的な学会や単なる異業種交流会にない魅力となっている。特に近年は企業による技術統制が厳しく、企業が異なる技術者同士が切磋琢磨(せっさたくま)する機会が少ない。そこで研究会は企業ごとの技術発表ルールや守秘義務を厳守し、発表者が希望すれば非公開で議論する。人材育成のため技術者を会員として送り出す企業から信頼を得ている。発表には、どのような技術者にも参照になる事例が多い。品質工学研究発表大会や企業交流会をはじめ品質工学会主催のイベントでは、会員に参加費の補助も実施している。 ©copyright 品質工学の理解を深めたい会員ニーズに応えるため、個別テーマごとに少人数でリーダーらから学べるワーキンググループ(WG)もリモートで多様に実施する。「人工知能(AI)とQE(品質工学)の連携」「社会貢献」「MT(マハラノビス・タグチ)活用」「RPD(ロバストパラメーター設計)研究」「自然観察」「相談」の各WGがそろう。パラメーター設計やMTシステムといった品質工学の基礎を知見の豊かな上級者からじっくり学べる。社会を変えつつあるAIに品質工学がどのように関われるかや、生き物の撮影写真を共有し環境問題について情報交換する趣味の自然観察のようなWGもある。品質工学と関西品質工学研究会の間口の広さを示している。定例研究会は見学が可能で、WGは同研究会の会員でなくても参加できる。 毎月の定例会に代わり1月は総会、5月は他地区品質工学研究会との合同研究会、7月は合宿、10月は品質工学シンポジウムと、充実したイベントも豊富に盛り込んでいる。総会では関西品質工学研究会の前任会長が恒例で、故・原和彦氏から続く新春の記念講演をする。合宿では一泊二日で会員が関西のさまざまな研修施設で寝食をともにして議論し、絆を強めている。品質工学コンサルタントとして米国を拠点に世界で活躍する田口伸氏が毎年ゲストとして訪れ、自動車や電機など海外の大手顧客企業の開発と品質の最新動向を紹介するのが興味深い。合同研究会と品質工学シンポジウムでは中部や広島など他地区の品質工学研究会・支援機関と共催し、品質工学会や企業、大学の第一線で活躍する講師を全国から招く。会員育成のほか、品質工学のネットワーク拡大と普及に努めている。 ©copyright 情報発信にも意欲的に取り組む。09年には、研究会での報告実例も交え品質工学の要所を初心者に分かりやすくまとめた書籍「品質工学ってなんやねん?」を日本規格協会から出版した。23年には年4回の無料公開ウェブ季刊誌「品質工学情報誌」を創刊。北海道、長野県、中部地区、広島県の品質工学研究会と協力し品質工学の魅力を伝えている。25年の品質工学研究発表大会では、広島品質工学研究会の会員とともに発表したすごろく形式のQE教材「遊んで学ぶ『技術者の大冒険』」と「作って気付く『技術者の大冒険』」が、実行委員長賞を受賞した。品質工学は日本発の独創的で高効率な技術評価手法で、導入する企業ごとに適する方法で根付いている。品質管理や欧米の評価手法との融合も進み、日本の製造業をよみがえらせる技法として再び期待が寄せられる。関西品質工学研究会はリモート参加も可能で、品質工学を学びたい技術者らの見学や入会を随時歓迎している。入会者には特典として、品質工学の数多くの事例から評価の方法を同研究会がまとめた「技術者のための基本機能ハンドブック」(非売品)を先着順で進呈する。