品質.技術ジャーナル

       

品質・技術ジャーナル

People

 「データエンジニアリングで生産性と価値の向上を」
       

 株式会社ジェダイト社長 鶴田明三さん

 株式会社ジェダイトは品質工学やデータなどを積極的に活用して製造業の競争力向上を支援するコンサルタント企業。三菱電機で研究開発者や設計・生産の改善リーダーとして活躍した鶴田明三氏が独立し、設立した。実践的で分かりやすい指導や人材教育のノウハウが強みで、一人で毎月約50件もの技術コンサルティングを精力的にこなす。品質工学の平易な解説書を著したほか技術士の資格も取得し、確かな専門知識と信用に裏打ちされている。単なる改善だけでなく、顧客の企業価値や収益力を上げるため、より高みの製品開発も指導する。コンサルタントの枠にとどまらず、日本の製造業復活を支えようと高い志を抱いている。【2022年2月24日付】

鶴田明三氏(19.7×21.5)

©copyright

        鶴田明三氏

 「企業の定期的な技術コンサルティングやリーダーの育成を中心に実施しています。主な顧客は12社で、件数は毎月約50件。21年12月に独立から5年経ち、指導実績は累計で3000件に達しました。品質工学を中心とするコンサルタントのプロの仲間入りをできたと思います。顧客は関東から九州まで。20年からはコロナ禍でリモート指導も始めました。その結果、リモートの方がむしろ頼みやすいという顧客が増えました。当社も移動の負担が軽くなり、今日は九州、明日は東、次は関西と、以前ならばできないスケジュールも組めるようになりました。互いにメリットがあります」「企業の定期的な技術コンサルティングやリーダーの育成を中心に実施しています。主な顧客は12社で、件数は毎月約50件。21年12月に独立から5年経ち、指導実績は累計で3000件に達しました。品質工学を中心とするコンサルタントのプロの仲間入りをできたと思います。顧客は客は関東から九州まで。20年からはコロナ禍でリモート指導も始めました。その結果、リモートの方がむしろ頼みやすいという顧客が増えました。当社も移動の負担が軽くなり、今日は九州、明日は東、次は関西と、以前ならばできないスケジュールも組めるようになりました。互いにメリットがあります」

 三菱電機に在籍中は生産技術や先端技術総合研究所で活躍。後半は設計・生産の改善指導者を任され、設計品質リーダーを6年間で888人育て上げ、イントラネットを通じた社内受講者は延べ5万人以上に上る。品質不良のリスク要因を製品開発の初期から漏れなく的確に予測できる設計品質向上ツールも独自に開発するなど、数十億円の業績改善に貢献した。

 「独立したころは前の仕事のつながりでいただく仕事が多かった。しかし、前職のころから日本規格協会や品質工学会、品質工学コンサルタント会社のアイテックインターナショナルの各講師を務めたり、日本規格協会から品質工学の解説書(「これでわかった!超実践 品質工学」)も出版したりしました。このため次第に受講生や読者の方から声をかけられ、顧客が増えました。いつまでも独立前の人脈に頼っていては長続きしません。独立する前から計画ノートを作り、どのように集客しようかと考えていましたが、いざ独立すると、前職の人脈以外からの相談が多く、驚きました。当社のホームページには見知らぬ方からも問い合わせの相談が来ます。私は06年からブログを続けているので、ブログとホームページをリンクさせ、ホームページに誘導できるようにしています。ホームページはとても有効な集客のツールです。ブログを作ったころはまだ独立まで考えていませんでしたが、ブログの蓄積が生きています」

 コンサルティングでは技術のさまざまな方法論を駆使するが、徹底した実践指導と人材育成を最も重視する。相談のテーマであれば例えば改善すれば金額換算でいくらのコストダウンになるのか、利益を上げてもらう目標を明確にしてモチベーションを高めている。企業に意欲を根付かせ継続してもらうには、企業内に指導するリーダーも育てなければならない。

 「私は元々、品質工学から方法論を学び始め、そこから実験計画法、統計的手法、信頼性工学、FMEA(故障モード影響解析)などと、手法を広げていきました。顧客は特に人材育成を望んでいるので、技術指導と人材育成を同時進行で行う指導プログラムが特徴です。スクール形式で1期1年で4~5社を指導し、設計品質を改善したり仕事の仕組みを変えられたりするリーダーを育てています。顧客が途中でやめず何年も指導を続けて、根付くところまで継続してもらえるのが強みです。テーマは顧客が実践している改善や、気づいていない点を掘り起こしたものになります。効果を試算して改善すれば100万円もうかる、これを始めれば1億円の売上高になるとか、テーマごとに計画時に試算するよう強く指導します。だいたい、各社とも毎年数億から数十億円の効果試算になっています。大きな成果を見込むことがやる気や継続につながり、経営者に合理的に説明して理解も得られやすくなります。顧客に利益を上げてもらうことが一番です」

ジェダイト(19.7×29.5)

©copyright

       コンサルティングでは実践指導と人材育成を重視

 品質工学では製品やサービスの品質の善し悪しが与える影響を企業だけでなく、社会全体への影響も含めた損失として「損失関数」という概念を用いる。しかし、コンサルティングでは損失関数を使わないようにしている。

 「損失関数はあくまでもバーチャル(仮想)な数字なので、品質工学を知らない経営者は理解や納得ができません。なので、このロスが減れば開発期間が短くなる、人件費が浮く、1年早く開発できたら機会損失も減らせると、分かりやすく実践的に説明できないといけません。このようなテーマを作る議論を、スクール形式で4~5カ月かけて取り組みます。まず、テーマ設定の調査をする。テーマができれば計画書を作って、経営幹部にプレゼンテーションを行います。初めて半年後に成果報告会や中間報告会も実施して、それを1年のサイクルで回します。1期の人数は約10人。なによりもまず、顧客にもうけてもらわないと社会によい製品やサービスを提供できません。そこが出発点です。もうけながら人が育ち、育った人材が品質工学などのスキルを学んで社内で広げる。私のミッションはそういう顧客やリーダーを増やすことです」

 しかし、もっとも伝えたいのは顧客に新しい価値を生み出すことや、10年後など将来を見越し研究開発することの大切さだという。そのために幅広い知識を生かし、顧客の経営者とも対話し、経営の全体もみたアドバイスに努めている。

 「QFD(品質機能展開)やTRIZ(発明的問題解決理論)などの手法も駆使して、製品開発の一番上流になる企画のところの指導に力を入れています。そこを重視しないといけない。改善は大切でも、いくら改善してもそれには限りがあります。工場の中の歩留まり改善はテーマの1割程度でしかない。それよりもっと上流で、価値や品質は作り込まれている。そこをちゃんとしないとよくならないので、より上流で始末しましょうと説いています。これからは新しい価値を生み出さないと、日本の停滞は克服できない。私自身がそういう話を顧客にするので、上場している大企業でも指導の発表会などには部・課長はもちろん、経営者にも来てもらえる場合がある。そういう方々に伝わらないと、企業は変わっていかない。こうした役職者と対話する時は、なるべく専門用語を使わず分かりやすく説明しています」

 日本の企業は人を育てる余裕が減り、グローバルに売れて稼げるものを少なくなったと指摘する。産業の多くは先行的な研究開発や人材への投資が30年間遅れ、それが失われた30年間の実態だという。幸い、コンサルティングを求める顧客は投資意欲があり、技術者もやる気がある。人を育てないと、グローバルでは生き残っていけないと危機感を感じている。上流の企画や研究開発の力を付け、素早く製品にする競争力が必要と考えている。

 「グローバル化でモノづくりは世界中でできるようになり、どこも同じで差を付けられなくなりました。今の日本は一部のゲームやコンテンツなどを除けば、世界で強い競争力があるのはBツーB(企業間)の技術が中心です。利益率の高い企業は短期間でニーズの強いものを作れる。BツーBの企業もそのようになれば成長できる。価値の方が大事で、モノづくりはコスト競争力の高い海外の方が有利です。米国のアップルがそうで、知的活動でつくった情報を売って利益を上げている。スマートフォンを中国や台湾で作るのが価値でなく、どのように魅力的な製品を生むかというところにこそ価値があります。日本の企業もそれを目指し、需要を掘り起こすため知的に生産性を高めないといけません。グローバルに売れる企画、研究開発、設計を考える必要があります。モノづくり自体の付加価値は減っています。単純なモノづくりであれば、どんどん機械に置き換えていけばいいのです」

鶴田明三氏(19.7×17.6)

©copyright

 前職で生産技術をアドバイスしていたころ、職場のスローガンは「100%回収」だった。受け身の姿勢で社内の事業所などから仕事を頼まれてやるのではなく、自分たちから提案して自分たちの給料を100%稼ごう、という攻めの姿勢だ。事業所が何千万円、何億円もコスト削減できる研究開発をやらせてくれと提案し、長年必死に仕事した。この経験が独立後、さまざまなテーマを提案できる基礎やセンスになり、自立できる下地になった。

 「自分たちで稼がないといけないので、それはすごい危機感だったんです。稼げないと人を減らされたり、ほかの部署の下請けをさせられたりするかもしれない。そうなりたくないから必死でアイデアを生み出し、起業家精神が生まれました。生産技術であれば、研究開発の成果を量産して、しっかりと成果を出すところまでもっていかないといけない。製品化の目前に待ち受ける「死の谷」を超えるのが一番大切です。そこの人材を強化しないと、研究開発の成果を形にできない。それを実践してきたからこそ、経験として伝えていきたい。MBA(経営学修士)を学んでも、本当に価値を作り込むところは実践者でないと教えられない。そもそもどうすれば財や価値を作れるかは、現場での経験がないと教えられないでしょう」

 人工知能(AI)を活用した品質改善や開発力向上も支援している。ただ、ビッグデータの解析によるAIは巨大IT企業がはるかに先行し強力なプラットフォーム(情報基盤)も握っているため、日本企業が後発で戦うのは難しいと考えている。

 「ビッグデータではなくて工場や設計、検査のデータに部分的にAIを使うのは以前から機械学習でやっていたし、今後も有力な分野です。一時的なはやりでなく、これからも使われていくでしょう。当社もお手伝いしています。品質工学の予測技術であるMTシステムを使う顧客はいるので、そのツールも提供しています。当社が得意とするデータ活用は、科学のデータサイエンスでなく、あくまでも技術で実践するデータエンジニアリング。データエンジニアリングを活用して顧客にもうけてもらうので、データサイエンスとは一線を引いています。ほかには、コンピューターシミュレーションを強く勧めている。特に上流の開発設計で質を高めるには、いきなり試作できず、予測して調べるフィージビリティーが必要になる。開発上流で品質を高めるために、コンピューターシミュレーションを大いに活用するべきです。3D(3次元)プリンターによる試作も併用して使えます」

 セミナーの講師とは違い、実践するコンサルタントを志してきた。次の5年、10年先を見据えた活動を視野に入れている。

 「製造業のリーダー育成を通じ、日本産業を再び興し、失われた30年を取り戻すのが当社のミッションと考えています。日本は資源国でないので、富を増やすには技術革新で価値を創出するか、効率的に仕事して生産性を上げるか、どちらかでしかない。それは製造業であれば、上流を担うエンジニアにしかできません。そのエンジニア、マネージャー、経営者のお手伝いを通じてサポートしていく。自分自身も含めて、何ができるかから語らないといけない。実践による顧客の成果と、人材育成のスクールの推進を両輪として、自分と同じ志を持つリーダーを増やしたい。人材を埋もれさせるのでなく、出る杭は打たれるでもなく、そうしたリーダーが企業で経営の重要なところに配置されるようにも努めたい」


 株式会社ジェダイト

〇本社/大阪市北区梅田1の11の4 大阪駅前第4ビル9F923-1146

〇設立/2016年12月

〇主なサービス/コンサルティング定期契約(中長期・本質的な業務改善、リーダー育成など)、データエンジニアリングに関する技術コンサルティング(設計改善、設計品質見える化、原因分析、パターン認識等)、仕組みづくり(教育体系、組織、ツール)、研修、講演

〇主な対応地域/関東、中部、関西、九州(他地域も相談、リモート対応可)

〇問合せ・ホームページ/https://data-engineering.co.jp