品質.技術ジャーナル

       

品質・技術ジャーナル

Interview

 「技術者は責任に自覚を、松下幸之助氏と田口玄一氏の教え」
       

 元松下電工(現パナソニック)技師長、原和彦・品質工学会名誉会員(関西品質工学研究会初代会長)に聞く

 日本は経済や産業の低迷から脱せず、政治も産業界も再生への道筋を示せないでいる。しかし、製造業などにはこうした現状を打破しようと、わが国発の独創的な技術方法論である品質工学を自主的に学び、活路を開こうとする意欲ある技術者らがいる。関西地域において企業横断的な品質工学の普及を長年リードしてきた元松下電工(現パナソニック)技師長で品質工学会名誉会員(関西品質工学研究会初代会長)の原和彦氏にインタビューし、技術力復活への処方箋などを聞いた。【2021年8月10日付】

原和彦氏(7.8×5.4)

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    原和彦氏

 -経済成長率の鈍化、新興国の台頭による国際競争力の低下、日本を代表する企業の品質不祥事の続出と、日本の経済・産業は困難に直面しています。

 「不祥事を起こしたある大企業でかつて6回以上講演した。品質工学のよいお話しをありがとうございますと言われ、管理職にもよく会っていた。講演が経営にどう響いたか分からないが、よくやっている企業だと思っていた。しかし、報道によれば顧客が求めるものとは異なる検査を30年間続けていた。検査はどういう位置づけにあったのか、検査をやりたくなかったのか、そういうところがまだ解明されていない。上からの命令は絶対、上意下達、忖度(そんたく)とも報じられ、まったくおかしな話だと感じる。品質の信頼を損なう問題はほかにも多くの企業で起きている。産業界がおかしくなっている」

 -品質問題でトラブルを起こす企業は、品質工学の考え方とまったく違うことをしているのですか。

 「品質工学も効率を上げるため(試験や検査を極力しなくて済ませる)試験レス、検査レスを目指す。だが、それは長時間かけて行う耐久試験や信頼性評価の代わりに、市場に出荷後のノイズ(品質劣化の原因になる使用環境や使い方の違い)も設計で考慮し、うまく評価しようというものだ。そうすれば耐久試験のように長時間かけて行う必要もなく、ノイズの影響も短時間で分かる。品質工学は開発や製造を効率化するが、技術の善し悪しを評価した後はバリデーション(確認実験)しないといけない。その意味が正しく理解されていない。品質工学を創始した田口玄一氏も、『工場の排水処理場で工場外に排水する場合、処理水の中に想定外の異物があるかわからないので、金魚を浮かべて金魚の生死で排水の良否を判断するのだと。人間の分からないところを最終的に判断することが大切で、それが金魚の役目だ』と言ってバリデーションの必要性を述べられた」

 -品質の不祥事が生じると経営者が辞めて幕引き、というパターンが続きます。

 「社長だけが悪いとは思わない。何か悪いことあれば殿様が腹を切れば済む。日本はそうやって問題を片付けてきた。日本は図面に設計者、課長、部長、所長とはんこを押すが、米国では設計者が図面にサインするだけだ。例えば橋や建築物には設計者の名前がきれいに刻まれている。だれが設計したのかが、重要になる。図面を描いた人が責任者ということになる。日本はそれが出来ない。はんこで上の人も認めた、と言っていては、誰も責任を取れるわけがない。責任とは何かを考えないといけない。米国などではそういうところをはっきりさせている。品質工学の考え方も明確で、一般的に品質の94%は設計者に責任があり、製造には6%しかない。製造に責任は取れない。品質工学も当たり前のことを言っている。社長が辞めて幕を引こうとする理由がよく分からない。もし社長が検査をしなくてよいと言ったなら話は別だが、本当の責任ということを、日本は分かっていない」

 -技術者出身の立場から、責任の所在をどのようにすべきだと考えますか。

 「松下電器産業(現パナソニック)を創業した松下幸之助氏はすごかった。松下電工(現パナソニック)社長だった丹羽正治氏に聞いた話だが、松下氏は道路が渋滞して8時の出社に遅刻したら、運転手に責任を取らせて、自分も自分の給料を減らした。それは普通、出来ることでない。社員がまだ100人しかいなかったころ、設計をミスした技術者には『おまえは俺の給料を盗むつもりか!』と大声でしかったという。周りの人はこれはえらいことだと思い、責任はだれにあるかみんな分かった。松下氏がすごいのはそういうところ。本人がしかられて責任があると、納得させないといけない。品質の問題も、設計の間違でトラブルが生じるように、ほとんど設計で決まってしまう。技術者に責任を自覚させる点では、松下氏も田口氏も同じことを言っている。品質工学では『社長のコストを下げよ』が命題である。社長のコストを下げよ、とは、『社会的損失』、つまり顧客の品質損失と生産コストの総和である社会的損失を最小化する、ということである」

 -自らが品質工学と出会った経緯は。

 「1980年にさかのぼる。それまでは松下電工の技術者として誰よりも優れた製品、世界一の製品を多く作ってきたという自負があった。顧客が困っていれば解決する製品を作ってあげるから、これを使え、という姿勢だった。しかし、農業の照明や空調などを管理する生産管理システムを手がけ、社内検査で合格しても出荷後にトラブルを起こすことが度々行われた。信頼性試験をしてもうまくいかず困ってしまい、松下電器産業で松下幸之助の顧問だった唐津一氏に何か良い評価の方法はないか相談すると、電電公社時代の同僚だった田口先生を紹介され『田口君が面白いことを考えている』と言われ『品質工学への道』という本をいただいた。しかし、本の内容は全く理解できず、1年間本棚の隅に眠っていた。1年後に本屋で『新製品開発における信頼性事例集』を見つけて読んでみると計算が間違いだらけで 日本規格協会に電話して、たまたま、品質工学研究グループ(QRG)セミナーで、講義中の田口先生を呼び出して計算の誤りを指摘したところ、『東京の規格協会に来なさい』とのことでお伺いしたのが田口先生に対面した最初の出会いだった。それから10年間は名古屋の中部品質管理協会で、毎月田口先生のご指導を受けて田口哲学の真髄を学ぶことになった」

 -品質工学を知り、技術の考え方を変えたのですか?

 「以前は何とかして作ってやるからこれを使え、という自分勝手な開発のやり方だった。『科学的思考』の考え方をして、『1+2=3』で、3以外に答えはないと仕事をしていた。これに対し、田口氏はシステムをパラメータ設計*を提唱し、3以外にもいろんなやり方があることが分かり、『技術的思考』で180度考え方を変えることができた」

 -どのように変わったのですか。

 「こうすれば使えるからと技術者の立場で勝手に作るのでなく、顧客が製品にどうあってほしいかというところから提案しないといけない。生産管理システムにスイッチを付けたから時間が来ればオン・オフになる、という一方的な考え方押しつけてはだめ。もしうまくスイッチが働かないと、それが原因で顧客の生産物が台無しになってしまう。一番大事なのは客の使い方や使用する環境の条件。だれが使うのか、どのような状況で使うのか。そういうことを設計者は考えないといけない。会社が勝手に決めた試験に製品が合格しても、顧客には関係ない。テレビもただ映るだけでは、顧客は満足しない。『物ありき』でスタートしてはいけない。だから製品を作るには、システム(製品)の目的と関係する機能を実現する技術的な手段となる働きの「基本機能」を考えないといけない。機能には何があるのか、上司の機能は何か、自分の機能は何か。私が品質工学から学んだのはそういう普遍的なことだ。何のため生きて、企業にいて、どのように役に立つかだ。目標を持ち、何をやるかを考えないといけない。野球だってそうだ。客が感動し満足するには何をするのか、ここはホームランを狙うところではないとか。技術者もスポーツ選手と同じで、悪いやり方が分かって本質を知れば、一流になれる。中途半端な人はなれない」

 -初めはどのように品質工学を学びましたか。

 「田口氏が東京の日本規格協会で指導していたQRGに通うわけにはいかないので、自宅の大阪から新幹線で1時間で行ける名古屋の中部品質工学研究会に通った。中部品質工学研究会で毎月、田口氏から指導を受けた。私は頑固な男だが、自分を変えようとすることにはエネルギーがあった。普通は会社で給料をもらって、定年まで残れたらそれでいいと考えて過ごす技術者が殆どだろう。しかし私は定年退職の2年前に品質工学会の副会長に推薦されて16年3か月、品質工学研究発表大会実行委員長を任されて『品質工学への道』の奥深さを学ぶことになった」

 -1994年1月15日に関西品質工学を創立し、初代の会長に就きました。

 「関西企業の有志の14名の皆さんで関西品質工学会を立ち上げて初代会長は私に任されて8年間継続して二代目会長は芝野氏が三代目会長は太田氏が四代目会長は鐵見氏がそれぞれ研究会の発展に努めておられる。中部品質工学研究会で一緒に学んでいた芝野氏と関西企業の技術者有志14名が集まって、関西品質工学研究会を設立した。私が言い出しっぺだったから、初代会長になった。初めは寄り集まりだったが、当時は品質工学をやらなきゃいかんと、みんな盛り上がっていた。品質工学で実際に技術が良くなる事例を学び、みんな感動していた。1993年には、後の品質工学会の前身となる品質工学フォーラムが出来ていた。その時、後の品質工学会会長の矢野宏氏に頼まれて、品質工学会の副会長の一人になった。関西からも1人ぐらい副会長をやらせよう、ということだった。副会長は大会実行委員長を含めて16年3カ月も続けた」

 

 -関西品質工学研究会が発足したころの活動の様子は。

 「日本規格協会の関西支部で毎月研究会を開いたが、関西支部の職員の女性から『隣の部屋でいつも大げんかしている』と言われた。私と創設のメンバーが丁々発止とやり合い激論していたので、ケンカに聞こえたのだろう。私の声も甲高い。変わり者、個性的なメンバーもいた。寄り集まりだから会員を増やそうとは思っていなかったが、次の会長に代わったころから会員が増えてきた。自然の成り行きだった。その後、標準SN比*(21世紀のパラメータ設計)で田口先生の間違いを指摘して1年後に過ちを認められて訂正されたことや、最近では、従来の正式のSN比に対して、関西の4名の会員がエネルギー比型SN比を提案して大会で実行委員長賞を授与したが、正式に認められていないことは残念である。田口のSN比の元来の考え方である、有害成分と有効成分のエネルギー比であるから学会として認可すべき課題である」

 -品質工学の講師としても全国で活動しました。

 「退職してからの方が忙しくなったほどで、何十社もの会社で講師を務めた。トイレの大手メーカーには9年間も通った。中国で作っていたトイレ洗浄器がプラグの差し込みのところで発火の会員からし、大きな大トラブルである」 を出し新聞沙汰にもなった。当時、中国で作られた製品は一般に品質が悪かった。困ったメーカーの担当者が日本規格協会のセミナーに学びに来て、そこで知り合ったのがきっかけだった。その人から私に来てくれと頼まれた。品質工学の技術の評価の仕方を教えているうちに、その会社はとても良くなった。このように問題が起きたのをきっかけに、品質工学を学ぶ企業もある。矢野氏も、品質の技術を根底から改める必要性に気づいた工作機械メーカーの社長に請われ、付きっきりで指導していた。ただ、これらのような企業はまだ少ない。問題意識もなく、最初から品質工学をやろうなんてことはない。経営者の多くが品質工学の必要性を理解しているとも思えない」

 -品質工学は自動車や電機メーカーなどを中心に実践されているが、自身で関わった外部のテーマで記憶に残るは。

 「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」が90年代(当時は宇宙開発事業団)の後半、衛星の打ち上げに失敗を繰り返していた。税金を使っているのにうまくできないのは問題があると、電子メールで文句を送った。ロケットを実際に作る三菱重工業やIHIは品質工学を活用しているから、そういう関係でJAXAも品質工学を知ったのだろうが、2004年に、種子島で打ち上げる前にJAXAの信頼性部門の責任者やプロジェクトマネージャーが私のところに訪れた。JAXAのロケットは地上で試験し、打ち上げてみたら『予想外の極低温下で、設計の限界を超える極低温とキャビテーションや振動による疲労破壊が起きた』と新聞発表が行われた。それまでJAXAは『1+2=3』の科学的な考えだけで、科学的に正しければ問題は起こらず、問題が起きればそれは想定外のことと説明していた。品質工学では問題が起こるものと想定して設計するが、それをしていなかった。問題が起きたら手直しし、打ち上げに失敗したら原因を追及して、直しては打ち上げていた。打ち上げの1か月前に今回は品質工学の考え方で地上試験をしたので、これでよいだろうかと私に聞きに来た。JAXAの偉いのは品質工学の考え方を素直に取り入れて学ぶ姿勢が立派であった。失敗が続いてからJAXAは変わった。材料を評価したり、打ち上げにMTシステム(多次元の測定値を総合し、一つの尺度を作成する品質工学の総合計測法)を使ったりした。MTシステムは少ないデータでも人工知能(AI)のように自動で異常を予測できる。尺度の正常値からずれてきたらチューニング(適合調整)して元に戻せば、ロケットの飛行を安定できる。その後、打ち上げたイプシロンロケットではパソコン2台で制御することができた。JAXAは品質工学の活動にも参加するようになった。今も信頼性評価や故障モードによる問題の再発防止も図っているようだが、それらの手法の限界を知って、品質工学の考え方も融合して進化している」

 -技術開発における普通の問題解決と品質工学の考え方は、どう違うのですか。

 

 「問題解決というのは、問題が発生するとモグラたたきで問題をどう解決して再発防止するしか考えていない。品質工学では、初めから問題が起きないようにシステムの基本機能を考えて初めから問題が起きないように未然防止を考える。例えば金属加工の不良をなくす場合、ひけ等の品質問題を調べるのでなく、もっと根本的に加工装置の基本機能の電力と切削量や時間などの入出力関係を定義して、信号因子や誤差因子(入出力関係を乱す要因)の水準をいくつか変えてみて計測する。評価方法はいろいろあるが、根本的には制御因子の加工条件と誤差因子・信号因子の交互作用でSN比評価を行い、直交表で最適の加工条件が求められる。トラブルの再発を防止しようとしたり、しきい値をどこに定めようかとしたりするのでなく、本質で考える。品質工学を勉強するとはどういうことか、よく考えないといけない」

 -品質の改善ならば品質管理の方法もあります。

 「品質のばらつきを統計的偶然誤差で考える品質管理と、品質工学は異なり、田口氏も統計は品質工学に不要だと言った。日本に品質管理をもたらした米国のデミング博士も、晩年は、品質を考える最も有効な方法は田口氏の損失関数(システムの特性値が目標値からはずれたときに発生する社会的損失を表現する関数)の考え方が、世界で一番適していると理解していた。開発や製造の工程で品質のばらつき考えるのが品質管理。品質工学は市場に出てからの品質のばらつきを事前に考える。品質管理と品質工学のそういう区分けは、理解されてきている。品質管理の足りないところを品質工学で補う。日本品質管理学会、品質工学会とも協力し合うようになってきた。私はそれはいいことだと思う」

 -品質工学は技術者や企業によっては難しく、アレルギーを持つ場合もあります。

 「品質工学の技術だけでなく、考え方の本質を理解するように努めて、品質工学の指導者も自分の言葉で説明できるようにしないといけない。ある経営者が部下から聞いた品質工学が少しも理解できないというから、自分に置き換えれば良いと説明した。社長の機能とは何ですか、と。人と金を使って、役立つ品物を顧客に迷惑がかからないよう作る。迷惑をかけないよう使用環境や使い方が違っても品質を安定させればよい、と説明したら、分かりましたと答えた。物を作るには必ず入力と出力がある。入力と出力の関係に着目して、はたを楽にするのが、働くことだと、説明している。顧客の立場、目的を考えて、開発のテーマと品物のシステムを考える。品質工学では、当たり前のことだ。品質工学用語のSN比や損失関数をいきなり話しても、理解してもらえない。まずは考え方、行動指針を話せばどんな人でも分かってもらえる」

 -大手メーカーで技術を極め品質工学も長年学んだ立場から、製品に対する厳しい指摘も続けてきました。

 「メーカーでは開発途中の製品を第三者の立場から客観的に評価するデザインレビュー(設計審査)を実施する。普通の技術者は採用する材料に信頼性があるのかとか、見て分かるようなことしか言わない。しかし私はそれをどうやって作るのか、製造時も想定して審査した。人と変わっていたので、そんなことまで指摘しなくてもと言われるまで聞いた。製品の宣伝では1,000回や1万回の耐久試験をしたとか、精度は5マイクロメートルの確かさとか性能をよく訴えるが、一体、何を持ってそう言えるのか。1,001回目に壊れるかも知れないし、使う環境が悪ければ精度も途中からばらつくかも知れない。品質工学であればSN比で(入出力関係を乱す要因に対する)確かさを評価できる。それが機能性評価というものだ。製品を何年か保証するというメーカーのやり方も、何の意味もない」

 -製品に対する消費者としては。

 「私は製品を買った後におかしいと思えば、遠慮なくメーカーに電話する。なぜこのような位置に操作の邪魔になるボタンを付けたのかとか、徹底的に言う。電話に出る応対者にはあなたが悪いのでない、設計の人に二度とミスしないように伝えて下さいと頼む。単に怒って電話する人はいても、設計が悪いからおかしい、という人はいない。矢野氏からは『この人(原氏)には製品を売らないでください、と書いた紙を背中に貼って歩かせなさい』と冗談めいて言われたくらいだ。よく文句言う人だと、矢野氏は思っていたようだ。でも、そういうことを言う人がいないのが、一番よくない。私のように議論にちょっかいを出す、政府にも技術のあり方をもの申す、そういう姿勢が品質工学会にも望まれる」

 -品質工学を学んでいる、特に若い技術者に対するアドバイスは。

 「田口氏の声を生で聞いたのは関西品質工学研究会でも2、3人に減っている。私自身も含めて我々が田口氏の本質をどこまで理解しているのかと問われたら、疑問に思う。それでも、間違っていようが、品質工学を勉強して、変わることの重要性を大切にしたい。発表会の場では研究成果だけを説明しても仕方がない。なぜ技術に問題が起きたのか、自分ならばどうするという議論をしないといけない。若い人にそう気づかせて、育てて、どんどんやらせた方がいい」

 -品質工学をもっと広めるには。

 「品質工学はもっと世の中を変えて社会貢献しないといけない。私がそれに気づいたのは30年前。そういうことを、我々はほとんどやってこなかった。JAXAの信頼性向上をお手伝いできたのは、そのわずかな一つなのかも知れない。技術の改ざん問題が起きれば、品質工学としてどうすればよいか考えを広く情報発信してもよいと思う。米国では2001年の9・11(9月11日)同時多発テロ後に、米国機械学会もテロに対する取り組みをすぐに立ち上げた。そういうところを学ばなければならない。それも社会貢献であり、普及につながる。失敗学の学者はトラブルが発生してから呼ばれるが、品質工学は起きる前に呼ばれるようにならないといけない。最近企業のデータ改竄(かいざん)が問題になっているが、品質工学の考え方でJIS化された「規格値の決め方通則(JISZ8403)」や品質とコストのバランスの基礎になる「新技術及び新製品開発プロセスのためのロバストパラメータ設計(JISZ9061)」の普及に学会活動が中心になることを期待したい」

 -長時間、ありがとうございました。


*パラメータ設計 品質工学ではロバスト(頑健な)設計のことで、市場環境条件に強い最適な商品設計

*SN比 仕事の全体の仕事量を有効な成分(S)と有害の成分(N)に分けて、両者の比で市場品質の良否を判断する(ピタゴラスの定理において、斜辺が全体の仕事量、底辺が有効成分、縦が有害成分で、両者の比がSN比となる)